エンジニア採用の成功率を上げるスカウト文面のいろは 〜ペルソナ別スカウト例文をもとに徹底解説〜

公開日: 更新日: イベントレポート

本記事は、株式会社LabBaseと株式会社YOUTRUSTの共催ウェビナーのイベントレポートです。

有効求人倍率が上昇傾向にある昨今、中でもエンジニア職は売り手市場であるため採用難易度が高くなっています。「候補者へスカウトを送ってもなかなか返信が返ってこない」とお悩みの企業様も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、ダイレクトリクルーティングサービスを運営する株式会社LabBaseと、日本のキャリアSNS「YOUTRUST」を運営する株式会社YOUTRUSTがセミナーを共同開催。

プロフィールの見方や、自社の魅力の効果的な伝え方など、実際の「ペルソナ別のスカウト文例」をもとに、返信率を上げるポイントを紹介しました。

登壇者紹介


株式会社LabBase
プラットフォーム開発本部 プロダクトマネージャー
高橋 あや 氏

新卒で株式会社LabBaseへ入社。カスタマーサクセス部にて、導入支援チームの立ち上げと実働を担当。3年間で、約250社のご利用企業様へのLabBase就職導入・活用支援へ従事。顧客満足度調査・支援プログラム改善・支援コンテンツ拡充などを推進。2022年の3月よりプロダクトマネージャーを担当している。

株式会社YOUTRUST
キャリア事業部 ディベロップメントグループ PMM
吉野 樹

横浜国立大学経営学部卒業後、2020年株式会社YOUTRUSTに入社。2019年2月から学生インターンとして参画していた同社ビジネスチームにてカスタマーサクセスの立ち上げから従事。2022年4月からCSチームリーダーを務めたのち、2023年1月よりディベロップメントグループに異動し、現在はPMMとして企画、マーケティングを担当。

スカウトを書く前に――プロフィール以外からも情報収集を

吉野 氏(以下、吉野) ――はじめに、就職・転職市場の現状からお伝えします。

最新の動向としては、「転職希望者は年々増加し、800万人を超える」「新卒入社前の段階で約7割が転職を視野に」「IT人材の有効求人倍率は10倍を突破」という3点が挙げられます。

こうした就職・転職市場の動向を前提にして、エンジニア採用の成功率を上げるスカウト文面について説明できればと思います。

まずはYOUTRUSTからご説明します。具体的なスカウト文面の紹介に入る前に、押さえていただきたいポイントが2点あります。

一つ目は外部からの情報収集です。YOUTRUSTは実名での登録が非常に多く、かつユーザーIDを自分で設定できるという特徴があります。そのため、ユーザーIDが他媒体と同じである可能性が非常に高いです。

ですので、スカウトを送りたい候補者をみつけたときには、まず「名前・企業名」や「名前・SNS名」、「ユーザーID・各種サービス」などで検索してみてください。例えば「名前・Twitter」や「ユーザーID・Twitter」といった形です。

Twitterでは例えば「from:{アカウント名} おもしろそう」と検索をすると、候補者のアカウント内で「おもしろそう」というワードを含んだツイートが見つかることがあり、候補者の興味関心領域を調べることができます。このように、事前の情報収集に時間や工数をかけていただくことが重要です。

二つ目は、候補者の所属企業の採用ページを参考にすることです。

所属企業の採用ポリシーや求人内容は、おそらく候補者と近い人物像であると想定されます。プロフィールが書かれていなかったり、名前や所属企業名しかわからなかったりするケースは、こうしたところから情報を集められます。

候補者の情報を集める上では、自社の採用において最も重視している点を明確にしておく必要があります。スキル、もしくはミッションやカルチャーへの共感など、自社が何を求めるかによって集めるべき情報が変わるからです。

高橋 ――事前情報の把握はとても重要ですよね。特に中途採用であれば、現在の所属企業の情報を集めるのは大切だと感じます。一方で、新卒採用の場合は相手が学生のため、集められる情報が少ないと悩む企業さんの声もよく聞きます。

その場合は候補者が所属している研究室のページを調べたり、その研究室の教授が発表している論文を読んだり、候補者の方の研究領域について理解を深めていくのがよいですね。

吉野 ――中途採用と新卒採用、どちらも周辺情報から候補者の人物像を想像するのが大事ですね。

【YOUTRUST事例紹介】モバイルアプリエンジニア・マネジメント候補向けスカウト

吉野 ――ここからは具体的なスカウト文面を紹介します。

一つ目は、モバイルアプリエンジニアに向けたスカウト文です。

まず、候補者のプロフィールを確認します。この方のプロフィールでは、出身大学や卒業年、インターンの経験などが詳しく記載されています。

プロフィールを見るポイントとして、まずは自社とのマッチ度を測ります。メインのご経験はAndroidアプリの開発であることはプロフィールを見ると明らかですが、「できること」に詳しい経験言語が記載されていますので、それらも確認して自社とのマッチ度を測っていきます。

次に、候補者が今後やりたいことを読み取っていきます。経歴を見て、これからどのような経験を積みたいのか、どのようなフェーズの企業で働きたいのかなど、想像力を働かせて考えます。

この方であれば、大学時代にスタートアップでインターンをしていた経験があり、スタートアップの開発環境に対しても耐性があるだろうと想像できます。大学卒業後もメガベンチャーやスタートアップに所属しているため、今後もスタートアップで働きたい可能性が高いと仮定できますね。自社もスタートアップであれば、マッチ度は高いと考えられます。

ただ、こうした方は他社からもスカウトを受け取っているでしょうから、自社の魅力をどう伝えれば相手に響くかを考える必要があります。

最後に+αの部分ですが、プロフィールの書き方やSNSの発信から候補者の人柄を想像して、スカウト文のトンマナも候補者に合わせると、より相手に響くスカウトになります。

ここまでのポイントを踏まえて、スカウト文例をご紹介します。

冒頭に、プロフィールから確認できる情報として「これまでAndroidアプリの開発経験が豊富であることを拝見し、お声がけしました」、「今後のキャリアの選択肢として、弊社にご興味をお持ちいただけましたら幸いです」と記載しています。

次に、候補者の過去の経験について「これまでの経歴を拝見すると、スモールなチームで時にはチームをリードしながら開発をされていらっしゃるのかなと思い」「認定スクラムマスターを取得されており、チームで開発を進めることに対する熱い気持ちを感じました」と書いています。このように、候補者がこれまで力を入れてきた部分にはしっかりと触れましょう。

その後に「弊社はこういう事業を展開しており、技術スタックは……」と自社の説明を入れ、「〇〇様がお持ちの経験をダイレクトに活かしていただけるのではないかと思っております」と、自社とのマッチ度について言及しています。

最後に、「まずはオンラインで30分ほど、〇〇様のキャリアプランについてお伺いし、弊社の話も交えながらお話するお時間をいただけると嬉しいです」と締めています。このときに日程調整のURLを載せておくと、候補者が興味を持ってくれた場合のネクストアクションが明確になりますので、こうした情報も加えていただくのがポイントですね。

まとめると、確認した情報をそのまま記載するのではなく、その情報を見てこちらがどう感じたか、感想をしっかり記載いただくことが大事です。あわせて、候補者のこれまでの経験を活かせる部分や、これからやってみたいことを叶えられる環境であるというところにも、しっかり触れるようにしましょう。

高橋 ――プロフィールに記載されている情報が少ない場合、どのようなスカウトを書けばいいのでしょうか。

吉野 ――事前に周辺情報をしっかり集めることが大事です。ユーザーIDやSNS、所属企業名で検索をかけるのが一つの方法ですね。

高橋 ――ここで先ほどの前提が効いてくるんですね。

吉野 ――そうですね。それでも情報が集められない場合は、「こういった領域に興味があるのではないかと、勝手ながら想像しているのですが……」というように、素直に伝えていただくと良いと思います。

続いて、2例目のスカウト文をご紹介します。

こちらはEMやCTOクラスといった、マネジメント候補の方に向けたスカウト文です。Webエンジニアの方のプロフィールを例に説明します。

前提として、こうしたハイレイヤーの方は他社からも多くのスカウトを受け取っている可能性が高いです。そのため候補者の転職意欲が高まった瞬間にお声がけができるよう、先にリストに追加しておくなど、あらかじめ準備を進めていただくのがおすすめです。

具体的な確認ポイントとしては、自社とのマッチ度を測るため、候補者の経歴や経験言語などを確認し、自社で求める方なのかを判断します。

続いて候補者が考える今後のキャリア像を知りたいのですが、このプロフィールからはそれをどう考えているかは読み取れません。その場合、自社の課題感や候補者への期待値をしっかり伝えていただくようなスカウト文にアレンジしましょう。

最後に+αの部分として、プロフィールの「できること」にある「ポケモンカード」や「美味しいゆで卵作成」といった、少しユニークな記載に注目します。一つ目の例でもお伝えしたように、候補者の人柄に合わせたトンマナを意識し、今回はスカウト文もユニークな書き方にしてみるのがおすすめですね。

新卒採用の場合、他社からも多くスカウトを受け取っている候補者に向けたお声がけのポイントはありますか。

高橋 ――他社からも多くスカウトを受け取っている方だと、通常のスカウト文面では響かないケースもあります。その場合、少し高い目線のスカウト文にするのは一つの方法です。「私たちはこうしたことに困っているのですが、力を貸してもらえませんか」といった内容ですね。

吉野 ――中途・新卒に関わらず、経験が豊富な方に対しては自社の課題感をお伝えした上で「力を貸してください」というアプローチが効果的ですね。

吉野 ――続いて、具体的なスカウト文面をご紹介します。

冒頭で「〇〇様の転職意欲が変化したのを拝見し、ご連絡させていただきました」と記載しています。意欲変更直後は返信率も高くなりますので、お声がけのタイミングを候補者に合わせるのは大事なポイントです。意欲を変えた瞬間に送っていただくと、返信率もぐっと高まる傾向があります。

次に、「Twitterも拝見しているのですが、(中略)勝手ながら考えております」と書いた後、カッコ書きで(できることに「ポケモンカード」と記載がございましたが、弊社のメンバーにもポケカ好きがいるのでオフィスにいらっしゃるタイミングがあればぜひ対戦等してください!笑)と記載しています。

本題から反れたり、本音を伝えたりするときはカッコ書きを使うとカスタマイズ性が上がりますので、ぜひ取り入れていただければと思います。

次に、候補者に求める期待値をお伝えします。先ほど、自社が困っていることを助けてほしいと伝えるのが大事とお話したのですが、その際に、相手が今後やりたいことを想像しつつ、その上で「自社としてはこれをやってほしい」と期待を伝えることが大事になります。

最後に+αとして、自社のことを簡潔に伝えるため、参考情報として自社の記事のURLを載せています。もう少し情報を得てから判断したいと考える候補者にとって、参考情報が載っているのはとてもポジティブな要素になります。

高橋 ――最初におっしゃっていたように、意欲変更など、媒体上で何かアクションがあったときにすぐ連絡するのは大事ですよね。

吉野 ――非常に大事です。徹底されている企業さんは、プロフィールや意欲が更新されたタイミングをしっかり見ていらっしゃいますね。スカウト文にも「今日プロフィールを更新されていましたよね」と記載すると、「そんなに自分に興味を持ってくれているのか」と好意的に受け取ってくれる候補者も多いです。こうしたことをきちんと伝えるのは重要なポイントだと思います。

【LabBase事例紹介】4つのペルソナ別、スカウト作成のポイント

高橋 ――新卒採用を前提にお話しますが、中途採用にも共通するポイントがありますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

まずは職種別に4つのペルソナを設定しました。①システムエンジニア、②Webエンジニア、③ネットワーク/インフラエンジニア・セキュリティエンジニア、④AIエンジニア・データサイエンティストの4つです。

後ほどペルソナ別のスカウト文を紹介しますが、はじめにすべてのペルソナに共通するポイントからお伝えします。

スカウト文例は、弊社が候補者にスカウトを送る想定で作成しています。

一番大事なのは、冒頭で「自分が何者か」を明記することです。具体的には、所属の部署や役職、氏名(フルネーム)を記載します。

次に、自社の魅力を一言で伝えます。思ったよりも企業のことを知らない学生さんも多いです。企業に関する情報量の差が人によって大きいため、まずはどのような事業を展開している企業なのか、どういった魅力があるのかを一言で伝えるのがポイントです。

続いて「あなたに会いたい理由」を書きます。ここには現場のエンジニアの声が入っているとベストだと思います。

最後に、お誘いをするのですが、まずはカジュアル面談や座談会など、ハードルを下げたお声がけがいいと考えています。

これらが全ペルソナに共通するポイントです。中途採用であればまず冒頭に候補者に会いたい理由を書くのがポイントだと思いますが、この点は新卒と中途の違いでしょうか。

吉野 ――新卒向けであれば、企業のことをあまり認知していなかったり、どの企業が何をしているのかわからなかったりする学生さんも多いと思います。自社がどのようなことをしているのかを最初に伝えるのはとても重要になりますよね。

一方で中途の候補者、特にYOUTRUSTのユーザーは情報感度が高い方が多く、気になることは自分で調べる方が多いんです。ですので、企業の紹介よりも先に「なぜあなたに興味を持ったのか」を書く方が返信率が上がる傾向にあります。

高橋 ――媒体によって、どのような候補者がいるかを考えるのが大事ですね。

ここからは、4つのペルソナごとの文面を紹介します。 まずシステムエンジニア向けのスカウトです。

システムエンジニアの傾向として、技術やスキルによるマッチングよりも、やりたいことや志向性のマッチングの方が大事になると考えています。例えば、クライアントワークがやりたい、上流工程に携わりたいなどですね。そうしたところをプロフィールから読み取ります。

この方のプロフィールを見ると地域のコミュニティ活性化に向けたプラットフォームの構築について研究されています。専攻はプロジェクトマネジメントですね。将来的には企業に在籍しながら博士号を取得したいとの希望がある方です。

このプロフィールを前提に、スカウトのポイントを3つご紹介します。

一つ目は共通点をみつけることです。この方はプラットフォーム構築に取り組んでいらっしゃるため、LabBaseが構想するプラットフォームにも共感いただけそうだと考えます。

二つ目は、候補者が今後やりたいこと、キャリア像を読み取ることです。この方は「企業に在籍しながら博士号を取得したい」という点から、自己研鑽の姿勢がある方だと読み取れます。

三つ目は、候補者が一番力を入れてきたことや強みをみつけることです。プロフィールを見ると、プロジェクトマネジメント関連の学会に出場され受賞歴もありますので、かなり力を入れているのが見て取れます。おそらく候補者としてもアピールしたいポイントなのではないかと想像できますね。

吉野 ――共通点をみつけるのは本当に大事だと思います。先ほど私もお伝えしたように、ポケモンカードなど一見仕事とは関係なさそうな共通点にも言及すると、YOUTRUSTでの返信率は高くなる傾向にあります。

高橋 ――確かにカジュアルな部分に触れるのも面白いかもしれませんね。続いて、スカウト文例を紹介します。先ほどお伝えしたとおり、冒頭に「どのような職種でどういった業務をお任せしたいのか」を記載します。

その次に、候補者と自社が目指している世界観が近いことをお伝えし、プロジェクトマネジメントを極めていることを評価します。

最後に、候補者が目指しているキャリア像を弊社は歓迎していることをお伝えします。

続いて、Webエンジニア向けのスカウトを解説します。Webエンジニアは求める技術への好奇心や開発経験によってターゲットとなる候補者が異なると考えています。そのため、どの程度の好奇心や開発経験があれば自社とマッチするのか、よく見極めることが大事です。

こちらのプロフィールの場合、冒頭に「社会人になったら2~3年後にプロジェクトを回せる人間になり、5年後にはCTOになりたい」と明言されているため、手を挙げれば機会が得られる自社の環境にマッチするのではないかと考えます。

次に、どのようなプロダクトを作りたいかはWebエンジニアにとって大事な部分だと思いますので、その点についてもキーワードをピックアップしていきます。今回の方は「愛されるプロダクト」「社会・会社にとって不可欠な存在」「幅広い技術スタック」といったキーワードが挙げられています。

最後にプログラミングスキルです。この方は幅広く言語を習得されていて、おそらく好奇心旺盛で、言語の能力を横展開して他の言語を極めていけるような抽象化する能力も持っているのではないかと推測できます。

これらのポイントを踏まえた上で、スカウト文例を紹介します。この候補者はかなり採用したい方ですので、複数名の現場エンジニアが会いたがっているというように、溢れんばかりの会いたい気持ちを冒頭で伝えます。

次に、候補者が目指しているキャリアを実現できる環境があることを伝えます。そして、プロフィールに記載されている幅広い言語から読み取った人柄や強みに触れます。表面的なスキルだけではなく、その裏にある努力や好奇心もわかっているということをアピールするんですね。その上で、もっとあなたのことを知りたいのでぜひ面談で教えてくださいと続けています。

最後に、候補者の価値観に共感していることをお伝えします。企業の価値観が一番表れるのは代表だと思いますので、代表の価値観がわかるインタビュー記事を紹介するようにしています。

吉野 ――「複数人が会いたがっている」という部分で、実際にみなさんでプロフィールを見ながらお話をされることもあるのでしょうか。

高橋 ――上手に運用している企業さんだと、複数人でプロフィールを見て「この人いいですね」とリスト化されていますね。

吉野 ―― 全社で採用に取り組んでいらっしゃるのは素晴らしいですね。

高橋 ――では続いて、ネットワーク/インフラエンジニア・セキュリティエンジニア向けのスカウトについてご紹介します。先ほどのWebエンジニアと同じように技術への好奇心や開発経験も大事ですが、それに加えてやりたいことや志向性も重視したマッチングが重要になると考えています。

この方はキャリアの方向性として「スペシャリストになりたい」という希望をお持ちで、その点は自社の制度ともマッチすると考えられます。

次に自社との共通点です。今回は「研究室インフラの自動構築ツール」が自社が展開するサービスに近いので、共通点としてアピールできるポイントになります。

最後に、候補者が一番力を入れてきたことを読み取ります。この方は複数の企業でインターンや実務経験を積んでいらっしゃって、その内容が「スペシャリストを目指したい」という想いと一致しています。その点が素晴らしいため、スカウト文でも触れるようにします。

スカウト文の冒頭では、自社はマネージャーとスペシャリストの両方を評価し支援する環境があることを伝え、ぜひスペシャリストを目指してほしいとお伝えします。

次に、スペシャリストになりたいという思いに対してしっかりと行動に移しているところが素晴らしいと評価をします。

最後に会うメリットを提示しています。というのも、この方は非常に人気が高そうで、他社からも多くスカウトを受け取っている可能性が高いです。そのため、採用の文脈だけではなく、エンジニアとして情報交換したいという形でメリットを伝えることにしました。

この点は新卒に限らず、中途でも大事なポイントになりますね。

吉野 ――おっしゃる通りです。YOUTRUSTでは、最初はとにかくカジュアル面談につなげることを推奨しています。実際に採用成果を出されている企業さんだと、最初から採用面接の話をするのではなく、お互いを知る目的でカジュアル面談を設定されているケースがとても多いです。最初は情報交換という切り口で、双方向のコミュニケーションを取っていただくのが大事ではないかと思います。

高橋 ――最後はAIエンジニア・データサイエンティストです。AIエンジニア・データサイエンティストと言っても幅広いので、どのモチベーションタイプに属するのかを把握することが大事です。

具体的に言うと、応用実装or基礎研究の軸と、開発チームorクライアントワークの軸で4象限に分けて考えると良いと思います。候補者がどのタイプに属するかに加え、自社が求める人材はどのタイプかも見ていくといいですね。

この候補者は「ユーザーの行動予測」「レコメンド」という技術を持っていらっしゃるため、対象は違えど自社でもその技術を生かしていただけそうだと予測します。

目指す世界観の共通点については、「企業とユーザーどちらにも利益がある」と記載があり、ステークホルダーがwin‐winになる世界観を目指している自社ともマッチするのではないかと感じます。

最後に志向性ですが、「ユーザーの声に耳を傾けて」と書いてあるため、ユーザーに対する思いが強い方なのではないかと想像できます。タイプとしてはクライアントワーク×応用実践タイプに近いでしょう。

こうしたポイントを踏まえて、スカウト文を作成します。

冒頭で、今の技術をそのまま自社でも活かせてもらえることを伝えます。次に、企業とユーザー両方の利益を追求していきたいという考え方が自社と共通しており、共感していることを示します。

最後にユーザー志向については、自社にもユーザー志向のメンバーが多くいることと、メンバーのリアルな声を伝えるためにエンジニアブログのURLを共有する形で締めています。

スカウトの失敗事例と成功事例――自社の魅力は候補者視点で考える

吉野 ――続いて、スカウトの失敗事例と成功事例をご紹介します。まずはYOUTRSUTからです。

スライドにスカウトの成功/失敗事例をいくつか挙げていますが、今回はこの中からピックアップしてご紹介します。

失敗事例の一つが、企業説明が自社から見た魅力のテンプレートになっていたり、長すぎたりするパターンです。

のびしろポイントとしては、自社の魅力を事前にしっかり洗い出しておくこと。そして、どんな企業、どんな事業内容、どんな環境を伝えると自社に興味を持ってくれるのか、相手視点で考えることが大事になります。

このとき、企業説明は1パターンだけではなく、候補者に合わせて使い分けられるように複数パターン用意しておくのがポイントです。

どのようなパターンに分ければよいか、一例をご紹介します。こちらのスライドでは「組織、カルチャーに自信あり」or「事業の面白さを押し出したい!」の軸と、「スタートアップ」or「IPO準備~以降」の軸で4象限にわけて考えています。この4つがすべてを網羅しているわけではないため、あくまで参考としてご覧いただければと思います。

4つに分けた中で、一つ目は「ビジョン重視型」です。「弊社はこうしたビジョンを持って、このような課題を解決しようとしています」と伝えるパターンですね。

二つ目は「得られる経験」です。先ほど紹介したモバイルアプリエンジニア向けのスカウト文に近いですね。まず、自社で活かしてもらえる候補者の経験について触れます。その上で、「今後やりたいことが自社でも提供できるかお話させてください」と訴求するパターンです。

三つ目は「どんな組織か」です。経営陣や所属チームにどのような人がいるのか、どのような出身企業のメンバーが多いかなどを書き、「面談のときにはお話したいメンバーをアサインできればと思います」とお伝えするパターンです。特にキャリアに悩んでいる候補者に響くスカウトではないかと思います。

四つ目は「意外性」です。例えば「完成されつつあるプロダクトという印象を持たれているかもしれませんが、事業領域を広げているので新機能の開発も経験できます」といった形ですね。

このように、会社の魅力の切り分けや伝え方によって複数のテンプレートを準備しておくのがおすすめです。

高橋 ――私も同じように、自社の魅力の伝え方に関する失敗事例です。自社の強みや魅力が抽象的で、ありがちな内容になってしまうというパターンですね。

例えば「金融、製造、官公庁など幅広い業務のシステム開発に携わっています」「課題ヒアリングや提案から要件定義~設計~構築~運用保守まで一貫して提供しています」といった書き方です。確かに強みではあるのですが、他社でも似たような強みを語っていることが多いため、違いがわかりにくいです。

この場合、抽象的なワードを具体的なワードに変換することと、強みや魅力がある根拠や背景を一緒に伝えることが大事になります。

書ける範囲で構いませんので、主な取引先を伝えたり、一気通貫してできるのはなぜかを伝えたりすると具体性が高まります。例えば「ユーザビリティを意識したフロントデザインとカスタマイズ性が高いシステム開発があるからこそ、多様な業界に対して最上流~実装・運用まで支援できる」といった形ですね。

吉野 ――具体的なことを伝えるのは本当に重要ですね。

続いて、YOUTRUSTから成功事例を紹介します。

1回のスカウトで諦めないことが成功につながった事例ですね。候補者のステータスとタイミングに合わせて複数回接点を持つことがポイントです。スカウトを1通だけ送って返信が来ないと諦めるのは、少し早いのではないかと感じます。ぜひ文面や送信者を変えて2通目のスカウトを送ってみてください。

YOUTRUSTでも2~3回スカウトを送る企業さんは多く、その方が熱意が伝わりやすい傾向にあります。

もう一つのポイントは、面談や面接を実施した候補者とのネクストアクションを必ず設定することです。面談や面接が終わるとどうしてもその後のやりとりがなくなったり流れてしまったりすることがあります。

また、候補者の方々のステータスや転職タイミングに任せすぎると、他社への転職が決まってしまうことが多々あります。自社からのアクションがきちんと決まっているかを棚卸しすることをおすすめします。

高橋 ――LabBaseからも成功事例を紹介します。スカウト文面の話からは少し逸れますが、いかに現場のメンバーがスカウト運用に携わってくれるかが成功を左右すると感じています。

候補者のプロフィールの内容を正しく把握した上で的確に自社の魅力を訴求したり、面談でアトラクトしたりするときに、やはり現場のメンバーが対応するほうが相手にも響きやすいです。

ただし、一気に全部のポジションで運用するのは難しいため、一部のポジションから試験的に運用し、成功したら他のポジションに展開するといいと思います。それも難しい状況であれば、候補者のピックアップと会いたい理由を挙げるところを対応してもらうだけでも、スカウトの返信率や候補者の意向も変わってくると感じています。

吉野 ――YOUTRUSTでも同じように、現場のエンジニアが関わる方が採用成功確率が上がる傾向にありますので、中途・新卒ともに共通するポイントですね。

【Q&A】スカウト送付で考慮すべきポイントとは

ーーQ1:曜日や時間など、スカウトを送るタイミングのコツはありますか。

吉野 ――媒体によって登録しているユーザーがアクティブなタイミングが変わると思いますので、利用している媒体の担当者に質問するのがベストだと思います。

一般的には、ユーザーがSNSを開く時間帯までにスカウトを送っておくと、返信率は少し高くなる印象があります。例えばYOUTRUSTは主にビジネスパーソンが利用しているため、平日の午前中に送っておくと、お昼休みのタイミングでスカウトを見てもらえるパターンは多いです。

あとは転職意欲が上がったタイミングのスカウトが一番返信率が高いため、ここは必ず押さえていただきたいですね。

高橋 ――スカウトを送るタイミングで共通しているのは、候補者が何かアクションをとったときですよね。プロフィール変更や企業や求人のブックマーク、あとはサービスに新規登録してくれたとき。そのタイミングでスカウトを送ると「自分に気づいてくれた」と候補者に良い印象を与えられておすすめです。

ーーQ2:スカウト文のタイトルに関して、Tipsがあれば教えてください。

吉野 ――YOUTRUSTはチャットUIですので、むしろタイトルや件名をつけずカジュアルに送っていただくことを推奨しています。LabBaseさんはいかがですか。

高橋 ――LabBase就職も同じようにタイトルを書くところはないのですが、チャットの冒頭に何を書くかは大事だと感じています。その点で言うと、キラーワードを入れるのはポイントの1つですね。

例えば「面接免除」「特別選考」「LabBase就職限定」などのキーワードや、「現場のメンバーと直接話せる」なども効果的だと思います。

吉野 ――確かにYOUTRUSTでも、ほとんどの企業さんが「はじめまして」からスタートする文章を書かれるので、あえて一言目に少し個性的な文章を入れている企業さんもいらっしゃいます。オリジナルの文言を入れたり、特別感を出したりというのがポイントですね。

ーーQ3:候補者一人ひとりにきちんとスカウトを書きたいと思いながらも、大勢の候補者にスカウトを送らなければならないとき、1人に対して使える時間がかなり少なくなってしまいます。テンプレートを用意した上で、どの部分を優先的にカスタマイズすればいいでしょうか。

高橋 ――コストとのバランスは非常に大事ですよね。私の感覚では、候補者のどこに魅力を感じたかと、候補者が触れてほしそうな部分をピックアップして言及するのはマストだと考えています。

価値観が似ているという部分は、余裕があれば書いていただく程度でいいのではないかと思いますね。

吉野 ――そうですね。ここに触れると候補者が喜んでくれるだろうなとか、ここを言及すると自社としても魅力を伝えやすいし、候補者にもその魅力がしっかり伝わるのではないかという部分に触れていただくのが大事ですね。

その際、良いところをいくつも羅列するのではなく、「特にここに魅力を感じました」と的を絞って伝えてもらう方が、より候補者には刺さるのではないかと思います。

ーーQ4:スカウトの文章を工夫したことにより変化した部分があれば教えてください。

高橋 ――スカウト返信率は文面以外にもいろいろな要素が関係しているため、正確なデータで示すことは難しいのですが、肌感覚としては変化を感じています。

例えば、面談担当を人事ではなく現場のエンジニアに変え、スカウト文面の冒頭にも「現場のエンジニアが面談します」と記載するようにしたところ、返信率が5%プラスになったケースがありました。大きく変動する企業さんであれば10%ほどプラスになった話も聞くため、スカウト文章の変更が返信率に影響するという感覚はありますね。

吉野 ――私は直近で『「テンプレに見えるかも!?」もったいないスカウト5選!』という、スカウト文章のTipsをまとめたnoteを公開していて、この中でもスカウト文章の工夫による返信率の変化に触れています。

それまでテンプレートのスカウトを送っていた企業さんが、冒頭で「なぜあなたに声をかけたのか」という理由を記載するように変えただけで、返信率が5~10%ほど上昇した事例がありました。やはり一言でもいいので、カスタマイズした内容を記載いただくといいのではないかと思います。

理系特化オンライン合説
『LabBase Summit』

LabBase Summitは、研究で身につけたスキルや思考力を活かしたいと考える理系学生と、理系採用を強化する企業のマッチングに特化したオンライン合同説明会イベントです。理系学生500名以上が来場するため、母集団形成に最適なイベントなっております。

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