
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速に伴い、企業活動におけるデータ活用が不可欠となっています。しかし、この流れを牽引する高度IT人材、特にデータサイエンティストの獲得競争は激化する一方です。
ITニーズの拡大により、IT人材の市場規模は今後も拡大し、2030年には深刻な人材不足に陥ると予測されています。特に中途採用市場では、データ分析やAIを担う技術者の絶対数が少なく、採用が困難な状況です。
この人材獲得競争を勝ち抜くための重要な一手となるのが、新卒採用です。新卒の学生の中には、データサイエンティスト志望者が比較的多く存在し、優秀な人材との接点を持つ大きなチャンスがあります。
本記事では、採用市場のデータに基づき、データサイエンティスト志望の学生の就活動向を把握し、彼らを惹きつけるための具体的な新卒採用戦略を3つのステップ(Who・What・How)に分けて解説します。
目次
データサイエンティストとは
「データサイエンティスト」とは、大量のデータを分析して、そこから価値ある示唆や意思決定を導き出す専門職のことです。
データサイエンティストに求められるのが下記の3つのスキルです。

- ビジネス力
- データサイエンス力
- データエンジニアリング力
単にデータを処理・分析するだけでなく、「ビジネス課題を発見 → 仮説を立てる → 分析する → 結果を活用して意思決定を支援する」までを一貫して担う役割が求められます。
IT人材の需要と供給
データサイエンティストは「中途採用が難しい領域」であり、新卒を採用し育成する動きが活発になっていると考えられます。
まず前提として、IT人材全体を通じて需要と供給にギャップが生じている状況です。

データサイエンティストの中途採用市場
また中でもデータサイエンティストの中途市場の規模は比較的小さいと考えられます。
下記の図はIT企業(IT提供側)およびユーザー企業(IT利用側)における「データ分析やAI等、新規事業を担う技術者」の人数を示したものです。

合計すると約18,000名が該当し、その中で転職層が10%と想定すると、中途採用できる人数は約1,800名ほどと考えられます。
データサイエンティストの新卒採用市場
一方で、新卒でデータサイエンティストを志望する学生数は、中途よりも多いと考えられます。
下記は弊社のダイレクトリクルーティングサービス「LabBase就職」に登録している学生の中でも、志望職種に「データサイエンティスト」または「AIエンジニア」を選んでいる学生の数です。

データサイエンティストのみで約4,600人、AIエンジニアを合わせると約9,800人が該当します。これらの数字からも比較的新卒の学生の該当者数が多いと捉えることができるかと思います。
データサイエンティスト志望の学生の就活動向
次にデータサイエンティストを志望する学生が、どのような就職活動を行っているのか、傾向を見ていきます。
エントリー社数

全体平均と比べて、データサイエンティスト希望の学生の方が複数エントリーしていることが見受けられます。
5~10社にエントリーした学生の割合を見ると、データサイエンティスト志望者は全体平均より11.63ポイント高く、積極的な就職活動を行っていることがわかります。
内定保有数
内定数については、1~3社で約70%を占めていますが 、データサイエンティスト志望の学生は5社以上の内定を持つ割合が平均より高いという特徴もあります。

彼らは優秀な層が多く、成長できる環境や待遇を重視する傾向がある早期層(キャリア成熟層)に該当することが多いと考えられます。
データサイエンティストの新卒採用の3ステップ
採用戦略は、以下の3ステップで進めます。

- Who (誰に):採用の目的・ゴールを定める(ターゲットを特定)
- What (何を):入社意思決定の達成条件を把握する(魅力を伝える内容の決定)
- How (どうやって):ターゲットに接触し達成条件を満たすための実行(アプローチ方法の実行)
それぞれ詳細について解説していきます。
① Who:誰がターゲットか
まず重要なのは、「誰がターゲットか」を明確に定義することです。
前述の「データサイエンティストに必要な3つのスキル」のとおり、データサイエンティストには「ビジネスカ」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」が求められます。例として、その中でもどういった素養を持っている人を採用するべきか考えてみます。
どのタイプの学生を採用したいかは、採用側のニーズに合わせて以下のタイプに分類できます。

- 学生A(総合力):上流(ビジネス課題設定)と下流(分析・アルゴリズム)の両方に強みがある
- 学生B(上流・ビジネス志向):ビジネス課題解決に強みがあり、仮説構築力、論理的思考力を評価軸とする
- 学生C(下流・技術志向):モデル作成後の分析に強みを持ち、Python、R、統計スキル、数学力を評価軸とする(アナリスト寄り)
どういった学生を採用したいかによって評価軸も変わってくるかと思います。また、採用したい学生像を更に明確にするには、「スキル/志向性 × Must/Want/NG でターゲットを定義」するのも効果的です。

自社にあった学生像を言語化・明確化することで、その後の採用活動の施策を決めるための判断軸として活用することができます。
② What:何を伝えると魅力を感じてくれるか
弊社が行ったアンケートやインタビューを元に、データサイエンティスト志望の学生が重視していることをまとめたものが下記です。

- 人/組織の技術力:論文、出場学会、研究者や教授、勉強会の頻度や質など
- 研究開発環境:データ量や内容、ご利用ライブラリ、計算機器の性能や利用可能台数、共同研究先/提携先、研究所についてなど
- 待遇:年収、配属方法、福利厚生など
これらの情報を採用プロセスの中で具体的に伝え、学生が持つ期待値と企業の提供価値をすり合わせる必要があります。
③ How:どのチャネル・手法でアプローチするか
3つ目のポイントが、ターゲット学生とのコミュニケーションの設計です。
学生と接点を持つ方法や、魅力的なコンテンツを届けるためのチャネル、コンテンツ、時期をカスタマイズします。

まず採用チャネルについてですが、学生との接点づくりや採用チャネルの選定は、あくまで手段と捉えるのが良いと考えています。

つまり採用手法は「目的から選ぶ・組み合わせる」のがポイントで、費用対効果や工数、求める母集団の質や量に応じて、ダイレクトリクルーティング、人材紹介、自社イベント、大学/研究室訪問などを目的から選び、組み合わせることが重要です。
次に「就活期間・時期別の目的を把握する」のがポイントです。
特にデータサイエンティスト志望の学生は早期層が多く、彼らの行動と時期に合わせたアプローチが求められます。下記は学生の想定イメージと、就活スケジュールの例です。

彼らは修士一年の6月頃夏インターンに向けて活動を開始し、夏・秋・冬インターンへの参加を通して企業を絞り込み、早期に内定承諾に至る傾向があります。(修士1年の12月~修士2年の5月頃)
また、スカウトサービスの活用(プッシュ型)など、効率の良い情報収集手段も活用します。
最後に「適したコンテンツを提供する」について見ていきます。
ターゲット学生や接触時期が決まったら、ターゲット学生の選考意欲に合わせて、インターンシップや個別面談のコンテンツをカスタマイズすることが重要です。下記はSansan株式会社様のインターンシップ設計の例です。
採用したいターゲット学生に合わせて、3つのパターンを設計しています。

- 就業実務経験型 (1ヶ月):実サービスの開発現場を体験させ、内定承諾を得やすくする
- 講義+ハッカソン型 (2週間):技術力が一定以上ある学生をターゲットに、学びと成長実感を提供し、優秀な学生と出会う
- 講義+お題型 (1日):広く優秀な学生と接点を作り、講義で自社の強みを伝えることでアトラクトに繋げる
採用したい学生を明確にし、その上で適した魅力付けや、見極めを行うのに必要なイベントを設計するのがポイントになります。
Sansanが実践する優秀な理系学生と出会うためのインターンシップ戦略
まとめ
データサイエンティストの新卒採用は、優秀な高度IT人材を確保するための重要な手段です。改めて以下に採用のポイントをまとめます。
- Who(ターゲット)をスキルと志向性で明確に定義し、
- What(魅力)として学生が重視する「技術力」「研究開発環境」「待遇」を具体的に伝え、
- How(手法)として早期層の就活動向に合わせてチャネル、時期、コンテンツをカスタマイズすることが、採用成功の鍵となります。
LabBaseではデータサイエンティストの採用に関しても、データベースを活用したダイレクトリクルーティングや、採用トレンドに基づいた採用戦略のコンサルティングを通じて成功をサポートしています。
採用に課題をお持ちの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

