
「理系学生のエントリーが集まらない」「内定辞退が続いている」
多くの企業がこのような理系採用の壁に直面しています。採用市場において、企業の理系学生の採用意欲は高まり続ける一方で、学生の動きは「早期化」かつ「厳選化」が進んでいます。
従来の「待っていれば集まる」手法や、文系と同じ採用プロセスでは、優秀な理系人材の獲得は困難です。
本記事では、理系学生特有の就職活動データを紐解きながら、なぜ理系採用が年々難しくなっているのかについて課題を整理し、要件定義から母集団形成、内定フォローに至るまで、理系採用を成功させるための全体像とポイントを解説します。
目次
データで見る「理系採用」の現状と難化する3つの理由
なぜ、多くの企業が理系採用で苦戦を強いられているのでしょうか。その原因は、単なる「母集団不足」だけではありません。
理系採用の難化要因は大きく以下の3つの構造的な課題に分類されます。

- 要因1:市場における理系人材の不足(需要拡大に対し、供給が追いついていない)
- 要因2:理系学生への理解不足(就活スケジュールや志向性に活動が合っていない)
- 要因3:採用プロセス上の課題(認知獲得や魅力付け、見極めの設計が甘い)
これら3つの要因について、最新のデータを基に詳細を見ていきましょう。
【市場要因】圧倒的な「売り手市場」と特定分野の需給ギャップ
まず直面するのが、構造的な人材不足です。
弊社が行ったアンケートによると、26卒採用において理系学生の採用目標数を「増加させる」と回答した企業は「減少させる」企業を大きく上回っており、理系採用の売り手市場化は年々加速しています。

理系人材の需要は大きく伸び続けている一方で、研究・技術人材の数は減少傾向にあります。
企業ニーズ(需要)と研究者数(供給)のバランスを見ると、「機械」「電気・電子」「情報(IT)」などの分野では、企業のニーズが研究者数を大幅に上回っています。

このような需給ギャップが、理系人材獲得競争の激化に繋がっていると考えられます。
【学生就活】「早期化」と「厳選化」する動きへの未対応
次に、理系学生特有の就職活動スタイルへの理解不足が挙げられます。
弊社が行ったアンケート結果から、理系学生の動きは、以下の3つの特徴が見られました。
- 早期の動き出し:修士1年の6月までに約75%の学生が就職活動(情報収集やサイト登録)を開始しています。
- 絞り込み(厳選化):エントリー(本選考応募)社数は「10社未満」が約75%を占め、中央値はわずか6社です。
- 職場・専門性重視:「どんな人と」「どんな仕事を」「どんな環境で」するかを重視し、選考参加時点で企業を厳しく絞り込みます。
アンケート詳細 >>26卒理系院生1,519名 就活動向レポート
多くの学生が早期の段階で接触した少数の企業に絞り込むため、従来通りのスケジュールで動いている企業は、本選考の土俵に上がる前に選択肢から外れてしまっている可能性があるのです。
【採用プロセス】課題の要因特定と適切な対策
3つ目は、採用プロセス上の課題です。
採用プロセス全体を俯瞰しながら、「要件定義」「母集団形成」「選考」「クロージング(内定)」などに分解し、どの段階で課題が発生しているかを特定して、それに合わせた適切な対策を打つことが重要です。

- 要件定義:採用基準が曖昧で、現場が求めるスキルと人事の認識にズレがある。
- 母集団形成:ターゲット学生へアプローチできておらず、要件とのマッチ度が低い学生ばかり集まる。
- 選考・内定:魅力付け(アトラクト)が不足しており、面接通過率や内定承諾率が低い(歩留まりが悪い)。
市場の人材不足(外部要因)は企業努力でコントロールすることは困難です。しかし、「最新の就活動向の理解」や「採用プロセス全体の再設計」はコントロール可能です。
まずは自社の採用プロセスにおけるボトルネック(問題箇所)を特定し、対策を打つことが成功への近道となります。
理系採用成功へのロードマップ:4つの重要ポイント
理系採用を成功させるために不可欠な、全体を俯瞰したプロセス設計における4つの重要ポイントを見ていきましょう。
- 採用要件定義:「なんとなく理系」ではなく、本当に出会いたいターゲット理系学生を明確にする。
- 母集団形成:「待ち」だけでなく、「攻め」の採用手法を戦略的に組み合わせる。
- インターンシップ・エントリー:学生の志望度を上げるインターンシップと、その前後の導線を設計する。
- 選考〜内定:理系学生の「知りたい」に答える選考体験(候補者体験)を提供する。
次章から、この4つのプロセスごとの具体的な実践方法を解説します。
①要件定義:技術レベルと志向性を言語化する
採用戦略において重要な基礎となるのが、採用したい学生の明確化です。
「誰に」を具体的に定義することで、その後のコミュニケーション設計や、接点づくりといった各手法が明確につながります。例えば、以下のようにターゲットの解像度を上げるだけでも、取るべきアクションは全く異なります。
- 改善前:「機械工学を専攻する優秀な学生」
- 改善後:「地方国公立大学に在籍し、『流体力学』に関する研究経験を持つ修士学生。BtoBの事業内容への理解があり、完成品メーカーだけでなく、基幹部品を支える技術に興味を持つ可能性のある層」
また、現場が求めるスキルと採用市場の現実をすり合わせるために、以下のマトリクスで要件を整理できるとより具体性が上がります。

- 技術レベルの定義:「即戦力(実績必須)」なのか、「開発経験あり」なのか、「素養あり(プログラミング経験)」なのかを明確に定義します。
- 志向性の定義: 求める「スキル」と「志向性」それぞれについて、「マスト(必須)」の要素と「+a(歓迎)」の要素を明確に分けます。
このようにレベル感を具体化することで、ターゲット学生の研究分野や保有スキルといった要件とのミスマッチを防ぎます。
②母集団形成:「待ち(Pull)」から「攻め(Push)」への転換
自社のリソース(予算・工数)とターゲットの希少性に応じて、ナビサイトやダイレクトリクルーティング、大学/研究室訪問など、さまざまな手法を適切に組み合わせることが重要です。

例えば特に理系採用においては、ナビサイトなどの「Pull型(待ち)」の手法のみでは、知名度や規模に依存するため、企業によっては採用課題が顕著に出る傾向にあります。
そういった課題を持つ企業様においては、自社の要件に合う学生にピンポイントでアプローチができるダイレクトリクルーティングなどの「Push型(攻め)」の手法が有効です。
■Push型(ダイレクトリクルーティング)のメリット
- 自社の知名度やブランドに依存しにくい。
- 必要な理系学生だけをピンポイントで集められる。
- ターゲット学生への候補者体験に集中できる。

理系学生の就職活動は、前述した通りエントリー企業の絞り込みの傾向もあるため、攻めの採用手法を積極的に取り入れ、学生の選択肢にいかに入れるかが重要となります。
③エントリー:「実務体験」と「早期選考」で志望度を上げる
年々、インターンシップなどの仕事体験の重要性が上がっています。
弊社が行ったアンケートでは、理系学生の約95%がインターンシップや仕事体験に応募しており、もはや必須のプロセスとなっています。

学生がインターン先を選ぶ動機の上位は以下の通りです。

- 実務体験できる内容だったから
- 内定が欲しい企業だったから
- 早期選考などを期待していたから
- 自分の専門性や研究と親和性が高い内容だったから
会社説明だけの座学形式ではなく、現場社員と関われる「実務体験型」のコンテンツを用意することや、必要に応じて参加後の「早期選考ルート」を提示することなどが、優秀な学生のエントリーを集める鍵となります。
④選考〜内定:理系学生目線での「候補者体験」設計
応募から内定に至るプロセスでは、学生の心理フェーズに合わせて「知りたい情報を、知りたいタイミングで届ける」ことが重要です。

- 認知・興味フェーズ(初期):
- 学生の関心:「自身のやってきたことがどのように評価されるか」「配属職種(自身の専門性とのマッチ)」
- 有効な施策(マス/個別):説明会開催、個別面談、適性検査の内容開示
- 選考・内定フェーズ(後期):
- 学生の関心:「一緒に働く人たちの雰囲気/人柄」「社会にとっての価値は何か」
- 有効な施策(マス/個別):少人数座談会、役員講演、内定面談、内定者交流会
選考プロセスにおいても、画一的な対応ではなく、「マス施策」と「個別施策」を柔軟に組み合わせ、学生一人ひとりの志望度を段階的に高めていく設計が求められます。
まとめ
理系採用の難易度は年々上がっていますが、市場動向を正しく理解し、ターゲット学生に合わせた「攻め」のアプローチと緻密なプロセス設計を行えば、採用成功は十分に可能です。
本記事で解説した内容の詳細を下記の「28卒理系採用戦略」の資料にまとめましたので、ぜひご活用ください。
■この資料でわかること
- 最新の市場動向おさらい
- 「量」が通用しない今、必要な戦略とは?
- 本当に採用したい学生像は?
- 理系学生に選ばれるためには?

