
近年、多くの企業で理系学生の採用が難航しています。
需要が高まり続ける一方で、採用活動が思うように進まない状況は、企業の成長戦略において大きな課題となっています。
特に、知名度に課題のある企業様や、採用リソースが限られている企業様にとっては、その苦戦がより顕著です。
本記事では、理系採用が苦戦する主な要因を解説し、これらの課題を乗り越え、理系学生を惹きつけるために企業が取るべき「効果的な採用戦略と具体的な施策」についてご紹介します。
理系採用に課題を抱える採用担当者や経営者の方は、ぜひ御覧ください。
目次
理系採用が苦戦する3つの要因
理系採用が苦戦する具体的な戦略や施策を解説する前に、まずはその根本的な原因となっている「3つの要因」の全体像についてお伝えします。

理系学生の採用が難航している要因は、企業がコントロールしにくい外部環境と、採用活動における課題の2つの側面から捉えることができます。
- 市場における理系人材の不足
・理系人材の需要は大きく伸び続けている一方で、その数は減少傾向
・特に需要の大きい機電・情報系学生の需要と供給ギャップが大きい状況
・これは外部要因であり、企業が直接コントロールすることは困難 - 理系学生の理解度合いと学生に合わせた採用活動の不足
・理系学生が企業選びや職種選びで重視するポイントの理解
・理系学生の就職活動のスケジュールの把握とそれに合わせた採用活動が不可欠 - 自社の認知度/魅力付けなどの課題
・BtoB企業、地方企業、ベンチャーなど企業認知度に課題がある
・業界・企業イメージと募集職種にギャップがあり、候補者が集まらない
・候補者を見極め、アトラクトする採用フローやアプローチ方法の確立が必要
これらの3つの要因が複合的に作用することで、理系人材の獲得競争は激化し、多くの企業で採用の難しさが増しているのです。
次に上記の内容について詳細を見ていきます。
① 市場における理系人材の不足
まず理系採用が苦戦する一つ目の要因は、市場における理系人材の需給ギャップです。
人材の需要と供給のギャップ
理系人材の需要は大きく伸び続けている一方で、研究・技術人材の数は減少傾向にあります。
特に、機電・情報系学生など、需要の大きい分野ではそのギャップが大きくなっています。

企業が業務で重要と考える専門分野と、実際に研究者として存在する分野を比較すると、「機械」「電子系デバイス」「電力・電気機器・回路系」などの分野では、企業ニーズが研究者数を上回る割合が目立っています。
この需給ギャップは、理系人材獲得競争の激化を招いています。
就職選択肢の多様化
理系学生の就職選択肢は多様化しており、メーカーだけでなく、情報系、サービス・インフラ(コンサル・調査、IT・通信、エネルギー)など、幅広い業界のインターンシップに参加する傾向が見られます。

選択肢が増えることで、企業はより多くの競合他社と理系学生の取り合いをすることになり、採用が難しくなっています。
② 理系学生の理解度合いと学生に合わせた採用活動
理系採用が苦戦する二つ目の要因は、理系学生の就職活動に対する理解度が不足し、学生に合わせた採用活動ができていない点です。
具体的には、「理系学生が企業選びや職種選びで重視するポイントの理解」や「就職活動のスケジュールの把握と、それに合わせた採用活動の実施」などが課題となります。
早期化と絞り込み
理系学生の就職活動は早期化する傾向があり、例えば弊社が行った26卒理系学生向けのアンケートの結果からは、約75%が修士1年6月までに活動を開始していることがわかります。

さらに、理系学生は選考参加時点で企業を絞り込む傾向が見られます。
エントリー社数は中央値で6社となっており、10社未満のエントリーが75.3%を占めるなど、引き続き絞り込みの傾向が確認できます。

マス採用のように多くの学生を集めてから絞り込む手法では、接点を持てずに終わってしまう可能性が高まっています。
就職活動フェーズにおける重視する項目
理系学生の就活動向からも、「専門性・事業内容重視」の傾向が見られます。
学生は「どんな人」と、「どんな仕事」が「どんな環境・待遇」でできるか、という軸で企業を決定する傾向があります。
下記の図は就活フェーズごとに重視するポイントの傾向を表しています。

情報収集段階や、説明会・インターン参加といった就職活動序盤は「専門性やスキルを活かせるか」を重視する傾向があり、
就活終盤や内定承諾の決め手としては、「仕事内容(自分の専攻やスキルを活かせるか)」と「事業内容」が上位に来ていることがわかります。
このように就職活動のフェーズによっても重視するポイントが変化しますが、「専門性」や「事業内容」といった点は重要ポイントとなります。
③ 自社の認知度/魅力付けなどの内部要因
三つ目の要因は、自社の認知度や魅力付けといった自社に関する課題です。
具体的には、以下のような課題が発生しています。
知名度がない、自社の魅力を伝えられていない
・業界や企業イメージと募集職種にギャップがあり、候補者が集まらない
・知名度不足、または自社の魅力が学生に伝えられていない
・候補者を見極め、アトラクトする採用フローやアプローチ方法がわからない
・他社との差別化ができていない、立地/待遇がよくないといった要因
これらの課題は、採用活動のフローにおける「母集団形成」「選考歩留」「内定承諾率」に影響を及ぼし、理系採用の苦戦に繋がります。
工数や予算
適切な人を集められていない、あるいはリソース(工数・予算等)の不足も大きな課題という声も伺います。
知名度やリソースが豊富な大手企業と同じ「待ちの採用」をしていると、理系学生の早期化・絞り込みの傾向から、接点を持てないまま終わってしまう可能性が高まります。
そのため、現状のリソースを効果的・効率的に活用した採用戦略・施策が求められます。
理系学生の採用に苦戦する企業が取るべき採用戦略と施策
理系採用の課題を乗り越えるためには、苦戦の要因を踏まえた戦略的な施策が必要です。
特に、「市場における理系人材の不足」は外部要因でコントロールが困難なため、「最新の就活動向とトレンドについて理解」し、「学生のニーズを押さえた接点創出・魅力付け」を行うことが採用成功のポイントとなります。

では、どのように「学生のニーズを押さえた接点創出・魅力付け」をすればよいのか。
その具体的な採用戦略と施策を3つご紹介します。
① 知名度に頼らない「攻め」の採用
知名度が低い企業や部門は、ナビサイトなどの「待ち」の採用に頼るのではなく、企業から学生に能動的にアプローチすることが重要です。
ダイレクトリクルーティングによる効果的・効率的な採用
能動的なアプローチの具体的な施策として、企業から学生へのダイレクトリクルーティングが有効です。

ダイレクトリクルーティングでは、採用要件とのマッチ度が高い学生に対し、企業側から直接メッセージを送ることができます。
これにより、母集団形成の数を追う従来のマス採用とは異なり、「質の高い母集団形成」が可能になります。
質の高い母集団起点の採用は、本当にフォローすべき学生に十分な時間を割くことができ、マッチング精度とアトラクトの向上により、選考の歩留まり改善、内定承諾率の向上につながります。

採用全体のファネルをスリム化することで、結果的に工数を抑えた効率的な採用活動につながります。
② 人事×現場協働での魅力的なコンテンツの提供
理系学生の「専門性・事業内容の重視」の傾向に対応するため、採用活動において現場部門(R&Dや技術部門)の協力が不可欠です。
インターンシップの重要性の高まり
早期接触の傾向を象徴するように、内定先企業へのインターンシップ参加率は増加しています。

25卒理系院生の内定先企業へのインターン参加率は54.7%に上り、インターンシップの重要度がより増していることがわかります。
インターンシップは、学生が「どんな仕事」を「どんな環境」でできるのかを具体的に知るための重要な接点となります。
現場の研究者・技術者と出会える場を作ることが、魅力付けにつながる
理系学生が就職活動中に最も面談したいポジションは「研究者・技術者」であり、これは他のポジション(若手社員、人事、経営者)を大きく上回る結果となっています。

この結果から、現場部門の採用への協力が非常に重要であり、研究者・技術者といった現場の社員と出会える場を作ることが、学生の専門性重視のニーズに応え、深い魅力付けにつながることがわかります。
人事と研究技術部門の協働によるCo-Lab(コラボ)採用
現場部門の関与の重要性の高まりを踏まえ、弊社では「人事部門と研究/技術部門が協働する理系人材採用の新しいスタンダード」として、Co-Lab(コラボ)採用を推奨しています。

現場部門の協力は、質の高い母集団形成(例:スカウト送付、募集要項作成)から、継続的な魅力づけ(例:部門を巻き込んだ面談・座談会、職種別のインターン、個別面談)に至るまで、採用の全てのフローにプラスの影響をもたらします。
③ コース別採用と、初期配属確約
理系学生の専門性重視のニーズに応える有効な戦略として、コース別採用や初期配属確約の導入が挙げられます。
コース別採用と配属確約について
まず「職種別/コース別採用」の位置づけについて、「総合職採用」「ジョブ型採用」と比較して整理してみます。

・総合職採用:初期配属、キャリア、ジョブを確約しない採用方式で、「配属ガチャ」と称されることもあります
・職種別/コース別採用:初期の配属職種を確約する採用方式で、エントリー段階でどの職種に応募するか決める必要があります
・ジョブ型採用:初期の職務を確約し、結果として配属部署も確約する採用方式です
理系学生は、初期配属を確約することで、自身の専門性を活かせる仕事・部署で働ける可能性が高まると感じています。
配属確約の希望度合いは年々上昇
内定前の配属先確約に対する希望度合いは年々上昇傾向にあり、26卒理系学生の74.7%が「確約してほしい」と回答しています。

この結果からも、配属確約が学生の志望度・内定承諾に大きく影響することがわかります。
職種・勤務地の確約の希望度が高い
選考時点で、理系学生が確約を強く希望している項目は、「職種」(89.0%が確約してほしい)と「配属の地域」(85.4%が確約してほしい)であり、9割弱の学生がこれらの確約を希望している状況です。

一方で、「関わる製品・サービス」の確約を求める学生は25.9%に留まっています。
このデータから、企業は少なくとも「職種」と「配属の地域」の確約を提示することが、理系学生の確保に非常に有効な施策であると言えます。
まとめ
理系採用が苦戦する背景には、「市場における理系人材の不足」、「理系学生の早期化・専門性重視といった動向への理解不足」、そして「自社の認知度・魅力付けの課題」という3つの主要な要因があります。
これらの課題を克服し、理系採用を成功させるためには、学生のニーズやトレンドに合わせて、最適な認知獲得・接触・魅力付けを行うことがカギとなります。
特に、知名度やリソースに頼らず、以下の3つの施策を組み合わせた「攻め」の戦略が重要です。
- 知名度に頼らない「攻め」の採用(ダイレクトリクルーティングなど):質の高い母集団形成と効率的なアトラクトを実現します。
- 人事×現場協働での魅力的なコンテンツの提供:学生が重視する「研究者・技術者」との接点を増やし、専門性を活かせる場があることを具体的に提示します。
- コース別採用と、初期配属確約:「職種」や「配属の地域」の確約が、学生の志望度・内定承諾率向上に直結します。
LabBaseでは、理系学生のデータベースを活用したダイレクトリクルーティングや、採用トレンドに基づいた採用戦略のコンサルティングを通じて、理系採用の成功をサポートしています。
理系採用に課題をお持ちの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

