
▼この記事のポイント
- 就活の早期化:理系修士1年生の11月時点で17.1%が内定を保持。早期化に伴う「入社までの長い空白期間」のフォローが人事の優先課題
- 「Why」から考える辞退防止:一様なフォロー(How)ではなく、学生が抱える不安(配属・社風・能力)を特定し、個別に解消することが重要
- 最新ニーズへの対応:77.8%が求める「配属確約」や、46.4%が重視する「若手社員との対話」が承諾率向上の鍵
理系採用は、かつてないスピードで加速しています。インターンシップの早期化に伴い、選考・内定出しのタイミングが前倒しになった結果、人事担当者の悩みは「母集団形成」だけでなく、「内定を出した後の辞退をどう防ぐか」へとシフトしています。
本記事では、最新データを踏まえ、学生の不安を解消し「最後の1社」に選ばれるための内定者フォローの具体策を解説します。
目次
1. 早期内定が当たり前になる理系採用
まず、最新のデータから27卒理系採用の市場環境を整理しましょう。
弊社で実施した最新の調査(2025年11月時点)によると、27卒理系院生の17.1%が既に1社以上の内定を保持しています。これは前年同期比で2.8pt増加しており、選考の早期化・高速化がさらに進んでいることを示しています。

また、理系院生の87.9%が修士1年(学部4年)の6月までに就職活動を開始しており、この割合は昨年に比べ約13ptも上昇しています。
早期から活動を始めている学生ほど、年内に内定を獲得する可能性も高く、結果として「内定出しから入社まで1年以上」という極めて長いフォロー期間が発生しているのです。
この長期化する待ち時間を放置すれば、学生の入社意欲(マインドシェア)の低下につながります。他社の選考が続く中で、自社が単なる「キープ」の1社から脱却し、確信を持って選ばれる存在であり続けるためには、戦略的なフォロー施策が不可欠です。
『27卒 理系院生 就活動向調査レポート(2025年11月速報)』を無料ダウンロード
2. 学生に「最後の1社」として選んでもらう内定者フォロー施策
内定を出してから承諾を得るまでの期間は、学生にとって「人生の大きな決断」を下す心理的負荷の高いフェーズです。
ここで必要なのは、学生の不安を一つずつ解消し、入社後の成功イメージを具体化させるアトラクトです。
施策は下記の画像のように様々ありますが、今回は学生アンケートの結果を踏まえて、特に重要だと考えられる施策についてピックアップして解説をしていきます。

「配属確約」によるキャリアの解像度向上
27卒学生の77.8%が「内定前の配属先(職種・勤務地)確約」を希望しています。

理系学生にとって、自分の専門性がどの部署で、どのようなプロジェクトに活かされるのかは、年収や福利厚生と同様に重要な判断基準です。
「入社してから決める」という不透明さは、現在の学生にとって大きなリスクと捉えられます。
- 具体策:内定通知時に配属予定部署や具体的な業務内容を明文化して提示します。初期配属を確約できるか検討することが、承諾率向上の鍵となります。
若手社員による「本音」フォロー
調査によると、エントリーや選考の意思決定に最も影響を与えるのは「企業の若手現場社員(46.4%)」です。

人事や役員の話は「建前」が含まれると考えられがちですが、年齢の近い若手社員、特に配属可能性のある現場社員の言葉にはリアリティを感じます。
- 具体策:入社1〜3年目の社員との座談会を設定します。入社前の不安や社風、人間関係に関するリアルな疑問を「本音」で解消できる場を用意することで、心理的な壁を取り除きます。
オフィス見学・現場ランチでの「雰囲気」体感
「志望度が上がったインターンシップについて、どんなきっかけで上がったか」といった設問に対して、「会社・人の雰囲気を知れたから(73.8%)」が最も高い結果となりました。

オンライン選考が主流になったからこそ、対面で会社や人について知ることができる体験は強烈なアトラクトになります。
- 具体策: 実際に働くオフィスや研究施設を案内し、現場社員と一緒に食堂でランチを共にする機会を作ります。実際の職場を見せることで、「この人たちと一緒に働きたい」という意欲を再認識してもらうことにつなげます。
3. 承諾後〜入社までのマインドシェアを維持する3つの施策
内定承諾はゴールではありません。特に早期承諾者の場合、その後の「内定ブルー」や、他社の選考を継続している友人との比較によって、承諾後に辞退が起こるリスクがあります。
そのため入社まで自社への興味・関心を維持し続ける必要があります。
同期・社員との繋がり(コミュニティ)作り
同期や一緒に働く人たちについての情報不足や、孤独感は不安を増大につながるため、早い段階で「横の繋がり」を作ることが有効です。
- 具体策:内定者交流会や懇親会を定期的に開催します。同期との絆を作ることで「この仲間と働きたい」という心理的安全性(コミュニティ)を醸成し、辞退防止につなげます 。
リアリティショックを防ぐ実務体験(インターン)
「入社してから通用するだろうか」という不安に対し、実務面での体験を提供します。
- 具体策:内定者インターンや実務型研修の実施です。実際のプロジェクトの会議に参加してもらい、簡単な業務を任せたりすることで、業務内容への理解を深め、専門性を発揮できる実感を与えます。
継続的な情報発信
情報の断絶は、関心の低下につながります。
- 具体策:社内報の送付や、経営層・活躍社員のインタビュー記事の紹介を定期的におこないます。自社への接触頻度を維持することで、他社への目移りを防ぎ、入社意欲をキープします。
4. 施策の成果を最大化する「バイネーム」と「感情」のマネジメント
ここでは、具体的なフォローに取り組む前に考えるべきポイントについて解説します。
なぜなら、どれほど魅力的な施策(How)を並べても、それが学生の抱える「不安」や「迷い」にヒットしなければ、辞退を防ぐことにはならないためです。
「手法(How)」の前に「辞退要因(Why)」を特定する
理系学生の辞退防止において最も重要なのは、「手法(How)から入らない」ことです。「とりあえず懇親会を開く」「とりあえず社長に会わせる」といった手段の目的化は、逆効果になることすらあります。
まずは、学生がなぜ辞退を考えるのか、その「辞退理由の要因」に対して適切な打ち手をぶつけるという思考プロセスを徹底しましょう。
以下に、理系採用でよく見られる辞退理由と、それに対応する有効なフォロー策を整理しました。
内定辞退の要因とフォロー施策の対応表
| 辞退理由の要因(Why) | 学生の心の声(仮説) | 有効な打ち手(How) |
| キャリアの不透明感 | 「自分の専門性が本当に活かせる部署なのか?」「配属ガチャが怖い」 | 配属確約の提示、現場マネージャーとの面談 |
| 社風・人への不安 | 「頭の固い人ばかりではないか?」「職場の雰囲気になじめるか不安」 | 若手社員との座談会、オフィス見学、現場ランチ |
| 自己効力感の欠如 | 「周りは優秀な人ばかり。自分が入ってついていけるだろうか」 | 内定者インターン、先輩社員によるスキルアップ支援 |
| 他社との条件比較 | 「給与や福利厚生、勤務地を天秤にかけると他社の方が魅力的に見える」 | 経営層によるビジョン提示、情緒的魅力(バイネームフォロー) |
「どの学生が、どの不安を抱えているか」を見極める
ポイントは「目の前の学生がどの要因に当てはまる可能性が高いか」をセットで考えることです。
例えば、面接中に「研究に没頭したい」と強く語っていた学生(キャリア重視)に対し、社風をアピールする懇親会ばかりを案内しても響きません。
この場合は「キャリアの不透明感」を解消すべく、技術リーダーとの技術的なディスカッションの場を設けるほうが適切だと考えられます。
まとめると以下の3つのステップで考えることが重要となります。
- ステップ1:これまでの選考記録や「辞退者の声」から、自社で起こりやすい辞退要因を特定する
- ステップ2:個別の学生ごとに「どの要因で迷うリスクがあるか」を予測する
- ステップ3:その要因を解消するピンポイントの施策を当てる
このように、「なぜ迷うのか(要因)」→「誰が迷うのか(対象)」→「だからこの施策(解決策)」という順序で設計することが、限られた工数で最大の成果(承諾率向上)を生むバイネームマネジメントのポイントです。
特に承諾してほしい学生に対しては、以下の項目を可視化した「フォローシート」を活用するのも効果的です。

- 競合状況の特定:自社だけでなく、具体的に検討しているA社、B社などの社名と職種名
- 志望度の割合(%):全体を100%としたとき、各社への気持ちの重みがどれくらいあるか
- ポジティブ要素(魅力):学生がそれぞれの会社に対して感じている魅力
- ネガティブ要素(懸念):学生が抱いている不安や懸念点
- 心情・選考軸:なぜその会社を検討しているのかという背景や理由
- 意思決定時期:いつまでに最終回答を出す予定か
- 自社の勝機・アクション:上記を踏まえ、自社がどう戦うか、具体的にどのようなフォローが必要か
これらの情報を個別に把握し、例えば「Aさんは地方勤務が不安なので、地元出身の若手と面談を組む」「Bさんは技術力を重視しているので、CTOと対談してもらう」といった個別最適化されたフォローを打てるとよいでしょう。
学生が迷っている理由が「年収」なのか「キャリアパス」なのか、あるいは「他社の選考結果待ち」なのかといったことを明確にすることで、的外れなフォローを防ぎ、承諾率を高めることにつながります。
まとめ:学生の「意思決定」に最後まで伴走する
採用の成功は、内定を出して終わりにせず、承諾前から入社まで学生が抱く不安の正体を一つずつ丁寧に取り除き続ける「候補者体験(CX)」の設計にかかっています。
配属確約や現場社員との対話など、最新の学生が求めている情報の開示を惜しまない姿勢が、信頼関係の基盤となります。
学生の「意思決定」は内定後からが本番です。最後まで伴走し続ける姿勢を忘れずに、施策を実行していきましょう。
採用プロセス全体で内定承諾率を改善する
今回は内定後のフォローに焦点を当てましたが、承諾率を根本から改善するには、「そもそも自社にマッチする学生をどう集め、選考中でいかに惹きつけるか」という前段の設計も極めて重要です。
「フォローを尽くしても、最後に競合に負けてしまう」と感じている方は、ぜひ母集団形成と選考中のアトラクト改善についても併せてチェックしてみてください。
内定辞退率を下げ、承諾率を高める「アトラクト」の極意とは?現場連携と選考遷移率の改善策【理系採用】
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