
「内定を出しても他社に流れてしまい、内定辞退率が下がらない」
「選考途中での離脱が多く、内定承諾率が目標に届かない」
理系採用において、多くの人事が頭を抱えるのが、この「歩留まり」の問題です。
辞退を防ぐために「フォロー面談の回数を増やす」「先輩社員との懇親会を開く」といった施策を打つ企業は多いですが、実は「手厚いフォロー」だけでは解決できない根本的な原因が潜んでいるケースが少なくありません。
本記事では、理系採用における内定辞退率を改善し、承諾率を高めるための具体的な戦略を解説します。人事だけでなく、現場社員を巻き込んだ「人事・現場との部署連携」も重要となるため、具体的な連携方法も交えて紹介します。
目次
なぜ、フォローを増やしても「内定辞退率」は下がらないのか?
まず前提として、「フォローを強化すれば辞退率が下がるわけではない」という事実を押さえておく必要があります。
内定承諾率(および辞退率)を左右する変数は、大きく分けて以下の2つです。
- 母集団のマッチング精度(ミスマッチ):そもそも自社とは志向性が異なる学生を集めてしまっている
- フォローの量・質(アトラクト不足):自社の魅力を正しく伝えきれず、学生が他社を選んでしまう
多くの企業が「2. フォロー」の改善に走りがちですが、もし原因が「1. 母集団」にある場合、いくら面談を重ねても内定辞退率は改善しません。まずは自社の課題がどこにあるのか、現状を正しく診断することから始めましょう。
下記のように顕在化している問題から、課題、原因、打ち手と掘り下げて確認していきましょう。

2つの「辞退パターン」判断例
上記の表を照らし合わせながら、自社がどの原因パターンに当てはまりそうか確認し、適切な打ち手を考えることがポイントです。
パターンA:フォロー不足型
- 原因:自社の魅力は十分にあるが、それを伝える場を設けられておらず、伝えきれていない。
- 対策:この場合は、選考体験の改善や現場連携(アトラクト強化)が有効です。本記事で解説する手法に取り組むことで内定承諾率の改善が見込めます。
パターンB:母集団ミスマッチ型
- 原因:「志望職種のアンマッチ」や「知名度重視」などが辞退理由になっているケース。こちらは自社ではどうしても要望に応えきれずフォローのみでは改善が難しい
- 対策:この状態でフォローを強化しても効果は薄いため、まずは「誰にアプローチするか」という母集団形成の戦略自体を見直す必要があります。
内定辞退率の改善に向けて、少しでも日々の活動に根拠・自信を持つため、そして成果を最大化させるために、過去のデータや学生の声から自社の課題を把握し、「どこを変化させれば自社の内定承諾率が改善されるか?」の仮説を持つことが重要です。
その上で学生動向などの情報収集やインタビュー、内定者フォローといった改善アクションができると良いでしょう。
選考辞退を防ぐ:「選考遷移率」を高める施策
内定承諾率を高めるためには、内定出し後のフォローだけでなく、選考プロセス全体での「選考遷移率(歩留まり)」を改善する視点が不可欠です。
学生が選考を辞退する理由は、企業の魅力不足だけではありません。「連絡が遅い(サイレントお祈りだと思った)」「面接官の態度が悪かった」といった運用面のミスも要因となる場合もございます。
このパートでは、選考プロセスの中で遷移率を高める具体施策を2つ紹介します。その他施策も網羅した詳細については下記の資料で紹介しているので、ぜひ合わせて御覧ください。
学生の「本音」に寄り添う面接
面接で「御社が第一志望です」と言っていた学生が、あっさりと辞退する。これは珍しいことではありません。学生も「選考に通過したい」「良く見られたい」という思いから、つい建前で話してしまったり、不安や迷いを相談できずに抱え込んでしまうことがあります。
辞退を防ぐためには、面接官側から歩み寄り、学生が抱える「本音(他社の選考状況や、自社への迷い)」を話しやすい雰囲気を作ることが重要です。
▼本音を引き出す質問のテクニック
- NG例(一問一答):「志望動機を教えてください」「他社は受けていますか?」
- これでは学生も用意した建前しか話せません。
- OK例(オープンな問いかけ・定量化):
- 「将来はどういうエンジニアになりたい?それはなぜ?」
- 「コンサルとメーカーで迷っているようだけど、志望割合で言うと何対何くらい?」
- 「もし勤務地が自由に選べるとしたら、どこがいい?」
このように、学生の価値観や判断軸を深掘りし、悩みに共感することで、初めて有効な解決策(例:勤務地を懸念しているなら、そのエリアの社員と面談を組む等)を提案できるようになります。

学生の「検討状況」に合わせて、コミュニケーションの形を変える
すべての学生に対して、機械的に同じフォローを行うのは得策ではありません。学生によって「今、何を求めているか」は異なるからです。
学生の検討フェーズに合わせて、「誰に、どのような時間を割くべきか」を見極め、一人ひとりに寄り添った対応を行うことが重要です。
- 自社を第一志望としてくれている学生
- すでに気持ちが固まっている学生に対しては過度な説得やアピールではなく、入社後の不安を解消し、歓迎するためのコミュニケーションが効果的です。「内定者懇親会」で同期との繋がりを作ったり、「入社までの学習サポート」を案内するといった選択肢があります。
- 他社と迷っている・決めきれずにいる学生
- ここが最も丁寧なフォローを必要とする層です。何がネックになっているのか(業務内容、勤務地、キャリアパスなど)を深い対話で引き出し、その不安を解消できる社員との面談をセットするなど、納得して決断できるよう徹底的に伴走します。
重要なのは要因特定と適切な打ち手を講じることです。下記のように選考中の辞退においても何が原因となっているか仮説を立てて、対策を考えていけるとよいでしょう。

対象となる学生の特徴や、会社選びにおいてどのようなフェーズやタイミングにあるのか、学生目線でも施策を考えられると、効果が得られやすくなります。

施策の詳細については下記の資料もあわせて御覧ください。
内定承諾の決め手を作る”現場協働”でのアトラクト
ここからは、内定辞退を防ぎ、承諾を勝ち取るための具体的なアトラクト(魅力づけ)の手法について解説します。
理系採用において、人事だけで内定辞退を改善することは限界に近づいています。なぜなら、理系学生の企業選びの軸が変化しているからです。
理系学生が「承諾」を選ぶ理由
最新の26卒理系院生への調査によると、内定承諾の決め手(=辞退の分かれ目)として上位に挙がるのは以下の要素です。
- 給与や福利厚生
- 職種や部署で専門性を活かせること
- 企業理念や働く人達の雰囲気
特に「専門性を活かせるか」「どんな人と働くか」という点は、人事担当者の説明だけでは解像度が上がりきらず、「入社後のイメージが湧かない」という理由で辞退に繋がるケースが多々あります。
ここで重要になるのが、人事と現場(研究・技術部門)が一体となった採用活動です。弊社では「Co-Lab(コラボ)採用」と提唱し、実践することで採用成功に繋がっている事例も多くございます。

>> 記事:理系採用を成功に導く 人事×現場協働型「Co-Lab(コラボ)採用」
現場社員こそが最強の「辞退防止策」
現場のエンジニアや研究員が選考プロセスに関わることで、学生に対して以下のような強力なアトラクトが可能になり、内定承諾率の改善に直結します。
- 具体的な業務内容や技術的な面白さを、専門用語を交えて語れる
- 「この先輩と一緒に働きたい」という情緒的な魅力を伝えられる
- キャリアパスや成長環境について、実体験に基づいたリアルな話ができる
現場社員との接点を作ることで、学生への魅力付けになることはもちろんのこと、現場が求める学生の採用要件とのマッチングの精度も向上につながります。
成功事例:現場連携で承諾率が大幅改善
ここではIT企業A社にて、スカウト段階でマッチング精度を向上させた上で、少数の学生への濃いアトラクトにより内定承諾が大幅改善した事例を紹介します。
当初人事主体で行っていたスカウト送付や面談に、現場部門を巻き込む形に変更しました。現場社員が該当部門でのダイレクトリクルーティング(LabBase就職)の活用をスタートし、初期接点から部門の協力を仰ぐことにより、5名の採用成功につながりました。

現場社員が協力しやすい「環境づくり」が成功のコツ
「現場は忙しいから協力してもらうのは難しい」と考える人事・採用担当者の方もいらっしゃると思います。重要なのは、現場の工数を最小限にする工夫です。
- 人事:ターゲット学生のピックアップや、スカウト文面の「叩き台」を作成する。
- 現場:リストや文面を「チェックするだけ」「面談に出るだけ」の状態にする。
このように依頼のハードルを下げることで、現場の協力を得やすくなります。まずは協力的な1つの部門から小さく始め、成功事例を作ってから全社に横展開していくのがポイントです。

そもそも「辞退されにくい」母集団を作るには?
最後に、内定辞退率を根本から改善するための「母集団形成」について紹介します。
どれだけアトラクトが上手くなっても、そもそも「自社への志望度が低い層(とりあえずエントリーした層)」ばかりを集めていては、辞退率は下がりません。
「推薦」頼みの採用は限界に
かつて理系採用の主流だった「学校推薦」の利用率は年々減少しており、現在は「自由応募」が主流になりつつあります。学生はナビサイトやWeb検索を通じて、自分で企業を選んでいます。
同時に知名度に課題を持っている企業様は、学生から認知がされにくくエントリーの検討の土台に乗らないといったケースもございます。
つまり、企業側も「待ち」の姿勢ではなく、自社にマッチする学生を能動的に探しに行く姿勢への転換が求められています。
「優秀な学生」を再定義し、ピンポイントで狙う
まずはどのような学生が自社にマッチしているか採用要件の定義・見直しから進めるのが重要です。例えば「優秀な理系学生が欲しい」という曖昧なターゲット設定では、ミスマッチによる辞退に繋がってしまいます。
自社で活躍している社員を分析し、「どんなスキル・経験を持っているか」「どんなマインド・志向か」をMust・More(+α)要件で具体的に言語化しましょう。

特定の採用ターゲット(例:機電系で、特定のアナログ回路設計の経験がある学生)に対しては、マス向けのナビサイトではなく、ダイレクトリクルーティングなどの攻めの採用手法が有効です。
またダイレクトリクルーティングにおいては、専門性や研究内容で検索するなど、特定の学生に絞り込み、ピンポイントで「あなたのような学生に来てほしい」とアプローチすることで、母集団の「マッチング精度」を高め、結果として内定承諾率の向上につながります。
まとめ:内定辞退率の改善は「総力戦」である
内定辞退率を下げ、承諾率を高めるのは一筋縄ではいきませんが、正しい手順で取り組めば確実に成果は上がります。
- 現状把握:辞退の原因が「フォロー」にあるのか「母集団」にあるのかを見極める
- 選考遷移率の改善:選考プロセスの中で学生の本音に寄り添い、個別にフォローする
- 現場連携(アトラクト):現場社員を巻き込み、専門性とリアリティのある魅力づけを行う
- 攻めの母集団形成:ターゲットを具体化し、スカウト等で「マッチ度の高い母集団」を作る
まずは、直近の「内定辞退者の分析」や、「現場社員との対話」から始めてみてはいかがでしょうか。
LabBaseでは、理系学生の動向データや、内定辞退者へのヒアリング調査、現場を巻き込んだ採用支援など、理系採用を成功に導くためのトータルサポートを行っています。現状の課題感に合わせて、ぜひお気軽にご相談ください。
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- 理系学生動向:内定率・辞退率の推移や、就活スケジュールの実態をデータで可視化
- 学生の本音と判断軸:「就活時期」によって変化する、理系学生が企業選びで本当に重視しているポイントを解説
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